賃貸派?持家派?
私は都内に住んでいて、我が家は借地だが一応持家だ。家の管理は母が基本的にしているが、母が亡くなった後、一人暮らしになる状況を最近よく想像すると、持家の一軒家を自分一人で維持するほどの体力や余裕はないだろうなと思う。70代の母は庭を含めてよく維持できているなと感心する。
東日本大震災、能登地震など震災直後の様子を見ていると、高齢者の方が壊れてしまった自宅を見上げて、これからどうしたらいいかわからないといった言葉や表情をため息交じりに話しているのが印象に残る。人生をかけて稼いだお金で建てた家ががれきになってしまうのは本当につらいだろう。
復興には20年、30年といったスパンの時間が必要で、直接被害を受けた人間でない私から見ても、高齢者の方が生きている間に震災前のような街に戻ることが難しいことは想像に難くない。未来への希望を持てというのは無理だと思う。
関東を含む太平洋側は、常に南海トラフ地震の危険に備えるよう長年注意喚起されているが、日本のような火山帯に住む人は、常にこういった震災の被害に遭う可能性が高い。我が家もいつ倒れるかわからないのだ。
持家か?賃貸か?
私が早期リタイヤを考え始めたのは2023年7月のことだった。その時40代半ばで自分のライフステージについて改めて考えたわけだが、まず独身の現状から仮に結婚相手が見つかったとしても、子供を1人授かって、大学卒業まで最短でも23~24年はかかることになるので、定年後70歳近くまで子供を育てるお金を稼ぐ必要がある。結婚や子育ては現実的ではないとして選択肢からは外した。
結婚や子育てを除くと、大きな節目となりうるのは退職、病気、親や兄弟との別離、そして自分の死だろう。親や兄弟との別れはいずれ訪れるわけだが、その際現実的に1人で暮らしていくことになる。その場合、今の持家を維持して暮らすか、引っ越して別の家で暮らすかを考える必要があるが、持家がいいか賃貸がいいかは非常に悩ましい問題だ。
持家は修繕費用の負担が大きい
先の震災のことを念頭に置けば、私は賃貸の方がフットワークが軽く、被災した場合の再建がしやすいと思っている。
持家の場合は一括で購入してしまえば、その後はメンテナンスにかかる費用はあるものの、毎月の出費は小さくて済むので、特にインフレが続く前提であれば先に購入して置くメリットは大きい。だが震災のような大きなアクシデントが起こると持家は大きなリスクになる。
一軒家だった場合、損壊状況にもよるが、がれきの撤去、修繕や建て直しは国から出る補助金と自費で行う必要がある。またマンションのような共同住宅の場合は、そのメンテナンスを行うには修繕積立費では賄えない場合、各住人の負担となり、一括で何百万円という出費も覚悟しなくてはいけない。
そして修繕や建て直しには全世帯の賛同が必要になるので、着手までに時間がかかってしまい、ヒビの入ったマンションで不安を抱えながら生活する必要がある。老後にそれだけの資産と時間が残っているだろうか?おそらく余力は残っていないだろう。
賃貸の場合は生活再建が早い
賃貸の場合は、損壊状況がどうであれ、安全な住居を提供する義務が建物の所有者にあり、その修繕費用を住人が負担する必要は基本的にない。住むことが難しいほど損壊している場合には、賃貸料を支払う義務はなくなるので、経済的負担は持ち家の場合よりも小さいし、契約書の解約条項次第では解約も可能だろう。
高齢者の場合は、政府や自治体の再建に向けた動きを待っていては寿命が尽きてしまう。震災の被害を受けた地域から早めに避難して、新たな賃貸物件を借りて引っ越しをすれば、地域の再生を待たずに生活を再建することもできる。
人間関係の再構築は高齢者には大きな負担になるかもしれないが、公団住宅なども選択できるし、ご近所トラブルがあった場合にも、すぐに引っ越して離れることも可能だし、自分の資産状況や健康状態に応じて、利便性の高い地区へ移ることもできる。
賃貸は住んでいる限り賃貸料を支払う必要があるし、高齢者ともなれば住みたい物件があっても、貸してもらえない場合もあるデメリットはある。終の棲家を探す場合には持家しか選択肢がないこともあるだろう。
私自身は親が生きている間は持ち家に住み続けるだろうが、人生の残り時間を有効活用するために早期リタイヤした独身の身分では、自分の資産状況に応じて柔軟に選択できる賃貸の方が、リスクが小さいのではないかと私自身は考えている。
コメント