需要が高いのに値上げできないデフレ脳日本

早期退職/FIRE
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需要に応じた価格設定が必要

毎年この時期になると、大学に入学する新入生や新社会人、転勤や転職で多くの人が引っ越しをする。最近は引っ越し業者も人手不足で悩んでいるそうで、予約を受け付けられない状態であるというニュースを見聞きすることがある。

最近は観光サービスでは長期休暇が見込める時期は宿泊費を高く設定するなどの、需要に応じて価格変動をする仕組みの導入がみられるようになったが、こういう需要の高まる繁忙期こそ、受注単価を上げる絶好のチャンスであり、単価を上げて、人件費を確保し、人材確保を行うべきなのではないかと思う。

日本はデフレ脳なのか、同一サービスだからいつも単価で、受け付けた順番通りに提供するという意識が高いが、枯渇するほど需要が高いならより多額の支払いをしてくれる客に優先的にサービスを提供する、優先権を付与した割高なサービスの提供するべきだ。

会社でよくある無茶ぶり短納期対応

どの会社でも似たような事例はあると思うが、私も会社で働いていた時、ずっと疑問と不満を感じていたことがある。いわゆる短納期受注案件だ。

私は通信系の仕事をしていたことがあり、基本的には工事費を初期費用として回収し、日々の運用業務はサブスクリプション型の契約で運用されている。サービス契約時に「工事調整には1ヶ月半の最低標準納期が必要です。」とか設定変更が発生する運用業務では、最低標準納期が記載されていて、「作業の依頼は5営業日前までに依頼してください。」などという注意書きが記載されている。

だが、実際は「1ヶ月後には引っ越しが決まっているから短納期でやってほしい」とか「3営業日で設定を変更してほしい」とか「障害が発生しているから当日中にやってほしい」とか緊急依頼が日常的に発生し、それを営業やSEなどが調整をして、設定変更を行う現場へ対応可能か打診に来る。いわゆる無茶ぶりをされるわけだ。

私はこういった緊急の短納期案件は、受けるときに特別料金をもらうべきだと、契約書の明記すべきだと主張していたが、客先にコストアップを依頼すると受注が取れないと、安くないと売れないというデフレ脳に支配された答えが返ってきて、いつも現場はしぶしぶやらされる羽目になる。

予算の使い切りが必要な年度末などには、こういった短納期の無茶ぶり案件は、どの職種でも急増するし、誰しもが悩まされているものだと思う。

新型コロナウィルスの感染拡大時のマスクと消毒液

2020年3月に新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、マスクや消毒液が全国的に爆発的な需要が生じ、それまで安価に手に入っていたものが、店頭での在庫が枯渇し、朝から並んでも購入できない事態となった。

また在宅ワークの必要性に迫られてパソコンや周辺機器なども需要が一気に高まったが、世界的に半導体不足に陥ったことで供給不足に陥り、ゲーム機なども店頭では手に入らなくなった。

こういった急激な需給の変化は、買い占めを行って法外な価格で販売する転売屋を横行させ、転売行為へのあたりも強くなり、一部売買サイトでは規制がかかることになった。

私個人は需要の高いものを独占的に仕入れて高く売るという行為は商売の基本だと思っている。転売屋の行為もその一部なので、致し方ないと思っているが、私はこの根本的な問題がメーカー側の「定価」にあると考えている。

定価という考え方は廃止すべき

マスクや消毒液、半導体など急速に需要が高まった場合は、私はメーカーこそがこの特需の恩恵を受けるべきだと思う。

店頭から在庫が消えてしまうほどの爆発的な需要が発生した時は、我先にと価格が高くても買いたいという人で溢れかえる。だが、メーカー側は急には製造量を増やすことができないまま、製造できたものを片っ端から従来の安価な価格で受注した順番に出荷してしまう。それを転売屋に独占されて、利益は転売屋が得ることになる。

本来はメーカー側が、こういった特需の時こそ、「いくらでも金を払うから優先的に供給してくれ」という相手にこそ価格を高くして稼ぐべきなのである。

メーカー側が利益を得れば転売屋が減る

メーカー側が価格を高く設定して、高値で買いたい人が買う環境ができると、まず必要以上の量を誰も買わなくなるため、家に使いもしないマスクが詰みあがることがない。

そして差額の利益が小さくなってしまい、大きな利益を得ることができない転売屋にメリットがなくなるため転売屋の数が増えなくなる。

メーカーが利益を得てこそ好循環が生まれる

メーカー側が高く売ることの一番のメリットは、設備投資をする原資が生まれるということだ。メーカー側に大きな利益が見込めれば、工場を増設して製造ラインを拡大できるし、新たに従業員を雇用をすることもできる。

製造ラインや人材を確保することで、供給量の安定に寄与して、絶対的にマスクや消毒液がないと業務に支障をきたす病院などには安価で安定的に供給され、社会インフラが守られてパンデミックを防ぐこともできる。

裕福な人が多額の消費を行い、メーカーが利益を得ることで、一般ユーザーが安定的な供給を得るまでの時間を短縮でき、新たな設備投資や雇用を生み出し、パニックによって失われた雇用を補う好循環が発生する。

高く売れるときは稼ぐのが商売の基本

日本はデフレに染まって価格が安くないと売れないと思っている。原材料費が高騰したことによるコストプッシュ型の値上げでも、なぜかメーカーは価格転嫁の際には必ず謝罪文とともに発表する。

確かに需要の奪い合いになっているものについては、他社より安く提供する方がシェアが高くなるだろうが、企業は高い需要の時こそ、高く売って稼ぎ、その分を会社の設備投資や人材確保に回し、より高い成長を目指すべきなのだ。それが従業員の所得の上昇につながり、景気も良くなり、程よいインフレにもつながる好循環を生むのだ。

需要が高い時にちゃんと価格転嫁できる企業は、次の商品を開発する余裕も生まれるし、人材も集まってくるようになるので、自社の商品に自信をもって高い価格設定をできる独占供給企業は投資の対象としても魅力的だし、働くならそういう会社で働きたいと私は思う。

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