大病による意識の変化
定期的な通院を終え、五反田駅周辺の散歩を終わって帰宅すると、ふくらはぎが筋肉痛のような痛みに見舞われ、翌日からパンパンに腫れた。その後発熱や倦怠感など風邪に近い症状に加えて、息切れや常時脈拍が100を超えるなど明らかな異常を感じたため、普段通っている総合病院に緊急で診察を受けたところ、急性心筋炎という診断がおり、ICUの体制が整った病院へ移送されて緊急手術を受けることになった。
幸いなことに無事手術を終えて、体中を検査しつくして、脳梗塞や胆嚢ポリープ、肝血管腫などの問題も見つかったが、18日という半月を超える期間入院を経て、自宅へと帰ることができた。
入院中から感じる変化
入院中は自宅にいたらできなかったであろう、半強制的な健康に良い生活をすることになった。減塩食による体のむくみの除去、心臓保護のためのステロイドの投与によるアレルギー症状の改善、体がなまっていくのを防ぐための体力維持、暇な時間をゆっくりと過ごし、これからのことをゆっくりと考えた。大病を経て起こった自分の中の変化について書き残しておこうと思う。
味覚の変化
病院食で減塩生活を強いられることになって、料理の味に対する認識が変わったように思う。人はより塩辛いものをおいしいと感じる。最近は年齢とともにこってりしたラーメンは食べられなくなって、あっさりしたしょうゆラーメンや塩ラーメンを好んで食べるが、人気のラーメンは味が濃い。旨味を凝縮しているというのもあるが塩分は多すぎる。人気の外食はどれも味が濃い。
成人男性で6g/日が摂取目安といわれているが、平均値は10g/日を超えているそうだ。運動もせずに塩分をとりすぎれば体にたまったナトリウムの濃度を中和しようと、体は水を貯めようとする。アルコールについても同じことが起こり、アルコールを飲むと中和のために水を取り込む。これがむくみだ。心臓に負担がかかると血液を送るポンプ機能が低下し、体の下の方に水分が貯まったままになる。これが心臓が弱ったときのサイン、ふくらはぎからアキレス腱周辺のむくみとして現れる。
私も近年仕事や体調不良のストレスからか塩味の強いものをよく食べていたし、寝る前にはビールを飲むことが常習的になっていた。足がつることがあって塩を少量なめたりしていた。心臓にとって良くないことばかりを毎日繰り返していた。こんな生活をしていれば心臓に負担がかかるのも当然だ。
味覚が塩味から旨味へ
減塩生活を続けると、舌への塩分の刺激が少ないので、より素材のうまみや香りに味覚や嗅覚が敏感になる。私は牛肉や豚肉が好きだが、病院食を食べ続けた結果、鶏肉のうまみや魚のうまみを強く感じるようになった。最近は特に刺身や寿司などの新鮮な魚介類を好んで食べている。
また香辛料を好むようになって、山椒や薬味などのスパイスも取り入れるようになった。塩分の刺激の代わりに従来は嫌いだった唐辛子とスパイスの合わさった七味唐辛子を多用するようになった。従来は唐辛子は冷や汗をかいて寒くなるほど苦手だったのにもかかわらずだ。不思議でたまらない。味覚が変わり食に対する好みの幅が広がっているのを自覚している。
後は料理を丁寧に食べるようになった。減塩をしなくてはいけないので、ラーメンなどのスープなどは残さざるを得ないが、器についたご飯粒をちゃんと食べたり、麺類なら底に沈んだもの丁寧に食べるようになった。
健康の基準の再認識
会社員時代は体調がいいということがほとんどなかった、20年以上体調不良を抱えながら、休職などを挟みつつ勤務してきたので、学生時代の自分の体調がよかったころの記憶が薄れてしまっていた。しかし今回入院して健康的な生活を半強制されたことで、体調が良い状態がどういう状態なのか、改めて確認することができた。
特にむくみが取れた体は軽いし、心臓のために投与したステロイドの影響でアレルギー症状も表面的には大幅に改善された。もちろんステロイド投与を止めれば戻ってしまう可能性もあるが、1年以上は少しずつ量を減らしつつ投与を受ける予定になっている。
今回の心筋炎はアレルギーが要因となって発生する珍しい症例とのことなので、今後はステロイドを投与している間に、アレルギー症状に対しても新しいアプローチをして、アレルギー症状の改善に取り組むことが必須となる。
いかに今の良い状態を維持したまま、さらに体調を改善するかを考えると、必然的に運動が必要だ。失った心臓のポンプ機能が戻るかどうかはわからないが、可能性がないわけでもないらしい。特に半月以上の入院で衰えてしまった筋肉や心肺機能を鍛えなおす必要がある。
運動に対する積極性
減塩生活は思っていたよりもはるかにつらい。例えばカップ麺1つ、麺だけでも2g弱、スープまで飲み干すと計3~4gの塩分を摂取することになる。外食をしても1食当たり同じ程度の塩分が含まれている。
これから株主優待が得られる株式を買い集め、外食を楽しもうと思っていた私からすれば、計画が根本から崩れてしまう。
汗をかくことで塩分を排出する
当初は計画変更を考えたが、すべて自炊にして苦しい減塩生活を続けるのか?と考えた結果、とてもじゃないが6g/日なんていう基準は守れそうもない。ならばどうするか?ナトリウムの排出を助けるカリウムやマグネシウムが豊富な食材を食べることが1つ。例えばバナナなどの果物や納豆、シイタケなどがいいらしい。最近は毎日のように納豆を食べ、バナナチップスやしいたけスナックにはまっている。
もう1つは取り込んだナトリウムを汗として積極的に排出してむくまないようにすればいい。やりすぎれば心臓に負担がかかるので、体調と相談しながらになるが、夏はエアコンを使わなければ簡単に汗をかくことができる。
心臓のポンプ機能が何割か低下してしまったことで、運動がある程度制限されてしまっていて、ランニングは到底できない。実は入院直前に運動と行動範囲の拡大のためにエントリーモデルのクロスバイク(自転車)を購入していたのだが、急性心筋炎になってしまったため、箱も開けられずに保管されていた。
退院して数日後、自転車を組み立てた。晴れた日は積極的に出かけ、たくさん汗をかき、たくさん水を飲み、余計に取り込んでしまった塩分を排出するようにしている。出かけることができない雨や、汗をかきづらい冬に向けて安価なエアロバイクを購入しようかとも考えている。
ステロイドの投与によりアレルギー症状が沈静化したため、汗をかくことに対する抵抗がなくなったことも大きいが、汗をかくとむくみが減って、体調も良くなるのを実感する。美味しいものを食べに行くことを動機として、自転車で出かけて積極的に汗をかくという生活を定着させたいと思っている。運動をすると食べたくなり体重は減らないのだが…。
第二の人生に向けたリフレッシュ
正直今回の手術や入院、そして今後の費用については痛い出費となったが、自分の人生を変えるようなインパクトを持った出来事だったと考えている。
2023年7月頃、健康状態が悪化していくのを我慢しながら、他人や会社のために嫌々やりたくもない仕事を続けるより、もっと人間らしい健康的な生活をしたいと思って早期退職を決めた。大病をして人生を棒に振るのを回避するためだったが、結果的に脳梗塞を発症し、急性心筋炎という死に直結する病気を患うことになってしまった。
結果を見れば、健康的な生活に戻すには退職の決断が遅かったとも言えるし、危うく残りの人生を失うところだったが、幸いにも脳梗塞と急性心筋炎という2度の危機を乗り越えて、日常生活を送るには問題ないレベルで生きて帰ることができた。
昨年から体調不良を理由に退職を前提とした休職をしていて、実質的なリタイヤ生活だったが、2024年6月30日に正式に退職となった。今は第二の人生に向けたリフレッシュをしたような、生まれ変わったような気持ちでいる。今後は体のメンテナンスを入念にしつつ、今後の人生を改めてじっくり歩いていきたいと考えている。
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