病という破滅フラグはある日突然に訪れる

早期退職/FIRE

突然の入院と絶望

もう5年以上前のことだが、親知らずの抜歯手術が必要で病院に4泊5日で入院していた時の話だ。

検査前日から入院し、絶食の上経口補水液しか飲めないというつらい夜の後、私の手術はうまくいったが、術後は顔がパンパンにはれ上がりまるで別人のような顔になっていた。

退院が翌日に迫ったある平日のお昼時、私は4人部屋の窓側でパソコンを開いて作業をしていた。遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

緊急入院してきた男性

しばらくすると空いていた隣の廊下側のベッドに、50代らしき男性が入院してきた。どうやら緊急入院だったようだ。

看護師さんが一通り説明した後、何かあったらナースコールで呼んでくださいと言って出ていった。カチ…カチ…カチ…と時計の音が響く無機質な病室に「ふぅー…」という深いため息が響いた。緊急入院した患者からのようだった。

しばらくすると会社の部下と思われる人たちの声が聞こえてきた。入院した男性を部長と呼んでおり、会社の部下たちのようだ。話の内容からするにどうやら仕事中に突然倒れて運ばれてきたらしい。片足に力が入らず立とうとするとふらついてしまうと、おどけたように男性は説明していた。その様子から部下から慕われていることが伺えた。

部下と思われる人たちが「お大事になさってください」といって去った後、またあの深いため息が響いた。おそらく脳梗塞なのであろう、彼の深いため息がその深刻さを物語っていた。

日が傾いてきたころに今度は家族が、父親の様子を見にやってきたようだった。奥さんや息子と話す男性の声は、半身は動かなくなり、まともに歩くことさえできない不安を押し殺して、懸命に明るく振舞い、「心配するな」という声は強がっているように聞こえた。

家族の面会時間が終わり、静寂が戻ると再び彼のため息が病室に響いた。そのため息は夜中まで続き、他人事ながらやりきれない気持ちを抱いて眠りについた。

いつ病が襲ってくるかはわからない

私は翌日無事退院を迎えて、午前中には病室を出たので、その後の彼の病状はわからない。ため息の様子だと完全回復は見込めないと説明されていたのだろう。養うべき家族もいて、部長まで昇進するような人であれば、その後懸命にリハビリを続けて社会復帰を目指したかもしれないが、元通り仕事ができる状態に戻っただろうか?

彼も大きなストレスを抱えながら、自分のため家族のため日々努力を重ねて部長まで昇進したことだろう。健康診断の結果や日々の体調などわずかに予兆はあったかもしれないが、こうした不幸な出来事は、ある日突然訪れる。

日本の会社員は意にそわない仕事でも文句も言わず働き、自分が悪くなくても謝らなければならない文化がある。これらのストレスに加えて週40時間+数十時間の残業を強いられることも当たり前で、家に帰れば家族サービスや家事育児も待っている。正直言って働きすぎだと思う。

私も会社員として働いている間は、日々体調不良を抱えながら働き、強いストレスを感じていたし、毎年受ける健康診断の結果は年々悪化していた。このまま働き続けていたら彼と同じように、ある日突然体が動かせなくなったり、この世を去るような病気に見舞われたかもしれない。

心や体からの声、悲鳴ともいえるアラートを無視して無理をし続けると、病気や不幸などによって強制的に人生プランの変更を考えざるを得ない日が来る。40代になればそういった体の不調はすでに表れて、日々何らかの薬を飲みながら働いている人も多いだろう。

体調を崩すほどきつい仕事、嫌な仕事を続ければ、きっとどこかで破綻する。日々の心や体調の違和感、健康診断の結果を軽く考えず、一度立ち止まって将来自分がやりたいこと、今の働き方に満足できているかを一度自分自身に問うてほしい。

私は今後の健康状態を考えて早期にリタイヤすることを選んだが、今の時代副収入を得る方法は数多くあるし、自分の知識や趣味を生かして稼いでいる人だってたくさんいる。無理なく働ける環境を選択して、本当のライフワークバランスを実現してほしい。健康こそ人生の資本である。

 

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